■マコの傷跡■

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chapter 23



~ chapter 23 “好きと嫌い” ~




伯母が間に入った話し合いが何度かなされ、
私が小学6年から過ごした家を、父は手放す事に決めた。
兄は会社の寮に戻り、私と父は2人でアパートへ越した。

私は本当は高校卒業後、専門学校へ行きたいと思っていたのだが
それよりも早く1人で生きられるようになりたくて
両親が離婚した時点で勝手に進路を就職コースに切り替えていた。
それを知った伯母が「今からでも、行けるのなら専門学校へ行きなさい」と言ってくれ
行ける専門学校を探し始めた。
単位が半端じゃなく足りない為、ダメかと思ったが
何とか行きたかった美術系の専門学校に受かった。

専門学校へ入学した私は、相変わらず表面的には明るかったけれど
自分に全く自信がなく不安定で、そして極度に寂しがりだった。
好きな人はすぐに出来るが、その人が私を好きらしいとわかると急に冷めた。
私なんかを好きになるような人なんか嫌だ。
そう思う反面ですごく誰かに好きになってもらいたかった。
自分の気持ちがよくわからなかった。

その頃から、父と暮らすアパートには父の知り合いの女の人が出入りするようになった。
最初は旦那さんも子供も居る人だと聞いていたので友達だと思っていたが
家の中に女性の下着が洗濯されて干してあったり
私が家に帰ると、父と一緒にお風呂に入っていたりした。
「自分がされて嫌だった事、人にすんなよな」
父には一言だけそう言った。

父の恋人は既婚であるという部分以外には別に悪い人ではなかった。
ちょくちょくやってきては掃除や洗濯やご飯の支度なんかをして行った。
ご飯は私の分まで用意してあった。
私は自分の事で精一杯で家の事-掃除や洗濯やご飯の支度-
それらを全くしていなかったから父の面倒を見てくれる人が居るのは実際助かっていた。
私の下着まで勝手に洗われた時は嫌だったけれど。

父と関係を持っている、と思うと嫌悪が湧くが居てくれて助かる事も多い。
私はその人を好きにはなれなかったけれど、嫌いにもなれなかった。
やっぱり自分の気持ちがよくわからなかった。


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